アメリカ小児科学会からエボラ関連

Early Release from Red Book : 2015 Report Of The Committee On Infectious Diseases
Hemorrhagic Fevers Caused by Filoviruses : Ebola and Marburg

というタイトルで多分来年版のRed Bookの内容がリリースされていました。

臨床症状


エボラもマールブルグも成人のデータが中心です。どちらも不顕性感染あり。2014年のエボラの死亡率は70%
潜伏期間は通常8-10日
先行する症状は発熱、頭痛、筋肉痛、腹痛、脱力、数日後に嘔吐、下痢、出血症状
小児では成人と比較して呼吸器症状は多いが、中枢神経症状は少ない
AST優位の肝障害、低カリウム血症、低ナトリウム血症、低カルシウム血症、低マグネシウム血症もよく見られる
凝固障害は認めるが、実際の出血はそれほど多くない 出血部位としては消化管が多い
終末期では中枢神経症状、腎不全が多い 発症後10-12日で敗血症症状、多臓器不全で死亡することが多い
妊娠後半に感染すると致死率90%に達する 感染した妊婦から出生した新生児はすべて死亡しているが、原因はあきらかにされていない

疫学


フルーツコウモリが自然宿主と考えられている コウモリ生息地での接触、ゴリラやチンパンジーなどの野生動物も中間宿主になるので狩りなどで体液に接触することで感染する 長い乾期の後に発生することが多い
多くは単独の感染者から不適切な医療・看護で感染が拡大する ただしアフリカでも家族内感染率は15-20%で、正しい感染対策をとればリスクは低下する
感染は口腔、粘膜、皮膚の傷からの体液の接触でおこる 葬儀の時に遺体を触る習慣や、感染した母親からの授乳でも感染する
空気、水、食物(野生の肉は除く)からの感染はない。気道からの感染もない。
小児は患者の世話をしたり、遺体に触る機会が少ないので家族内感染のリスクは相対的に低い。
児童、若年者は5才以下の小児、成人に比較すると死亡率が低い可能性がある
ウイルスの量は症状と比例するため重症患者からの感染リスクは高いが潜伏期間中の感染はないとされている
免疫学的に保護された部位(精巣、精液、母乳、眼房)では快復後数週間ウイルスが存在する可能性がある。快復後3ヶ月は避妊もしくはコンドームを使用する必要がある

診断


感染地域から帰国後21日以内の発熱に対してはエボラを疑う必要がある。
血液サンプルのRT-PCR、ELISAによるウイルス抗原、IgM抗体、細胞培養など(細胞培養はLevel 4の設備必要)
鑑別診断としてマラリア、麻疹、チフス、ラッサ熱、デングなども考慮

治療


厳重な隔離の元で基本的には保存的治療:輸液、昇圧剤、血液製剤、TPN 合併が疑われる場合は抗マラリア薬、抗生剤も
体液の喪失は成人で1日10Lにも及ぶ 生食よりリンゲルが有効かもしれない
抗生剤は消化管内細菌をカバーした方がよい 出血リスクあるのでNSAIDS、アスピリン、筋肉注射は避ける
試験的にモノクローナル抗体、small inhibitory RNA、アンチセンス化合物、ヌクレオタイドアナログ、回復期血清などが試されている
ribavirinは無効なので使用しない ステロイドは副腎不全がない限り使用しない

隔離


標準、接触、飛沫感染対策 陰圧室が望ましい 治療に当たるのは限られた専門スタッフに限るべき
二重の手袋、N95マスク、ガウン、フェイスシールド、靴カバー、ゴム靴など必要

感染対策


接触者は毎日の体温測定、健康状態を報告する必要 行動制限も必要 ワクチンは現在開発中
発症後7-15日間母乳中にウイルス検出するが、母乳感染があるかどうかはわかっていない