アトピー性皮膚炎の最新情報
03/01/15 22:44
アメリカではアトピー性皮膚炎(以下AD)の小児における有病率は少なくとも10%に達しており、1才までにそのうち65%が、5才までに85%が発症する。医療機関受診も増えているが、小児皮膚科医や小児アレルギー科医といった専門家の数は足りず、一般小児科医が治療に当たるケースが多い。複数のガイドラインが発表されているが、入浴、保湿、外用療法、アレルギーの関与などにまだ現場の対応に混乱がある。
近年ADの病因として皮膚バリア機能の破綻が注目されており、本論文では皮膚対策に重点を置いたアトピー治療について報告した。
アトピーの主要症状は掻痒と反復する湿疹性皮膚炎である。皮膚症状は年齢によって変化する。
ADが患者や患者家族のQOLに及ぼす影響は軽視できない。
皮膚バリア機能の破綻、環境因子、遺伝的素因、免疫異常などが複雑に関与している。かつてはIgE産生異常や肥満細胞の活動性などが重視されたが、最近はバリア機能の破綻が重視されてきている。
皮膚バリア機能の主な働きは保湿、外部からの刺激物、抗原、病原体の侵入を防ぐことである。バリア機能維持のためにfilaggrinが重視されている。バリア機能破綻による吸入抗原の侵入、皮膚pHの変化によるブドウ球菌などの増殖も関係が疑われている。
ADと食物アレルギーの関係はおそらく過大評価されてきたが、真の食物が原因のADはまれである。食物アレルギーによる症状は一般的に蕁麻疹のようなIgEの関与した反応だが、食物でADが悪化する場合は多くは遅延型反応が関与している。食物アレルギーは悪化因子にはなるかもしれないが、原因ではない。ただし、卵アレルギーは例外で、卵アレルギー患者の半数近くが卵制限でAD症状の改善することが報告されている。
皮膚からの吸入抗原の監査を防ぐことでアレルギーマーチを阻止できる可能性がある。
アレルギー性接触性皮膚炎(Allergic contact dermatitis : ACD)はおそらく過小評価されている。治療抵抗性のADの場合、合併を疑う必要がある。
1)皮膚の防御機能を守るためのスキンケア、2)局所抗炎症剤、3)掻痒コントロール、4)誘発因子としての感染症対策 が治療の基本方針
患者家族への教育も重要。
スキンケアの基本は皮膚の保湿機能を維持し、刺激物が誘発因子の侵入を防ぐことである。入浴回数については結論は出ていないが、入浴後にしっかり保湿すれば毎日の入浴の意義はある。皮膚の水分喪失を防ぐためにはぬるめの湯にして、入浴時間は長すぎないようにする。香料などの添加物による悪化の可能性に注意。重要なのは保湿。様々な外用剤があるが、軟膏、クリーム、ローションでは軟膏が保湿効果は高い。保湿剤は最低日に一回は全身に外用する。
ステロイド外用剤が治療の基本で適切に使用すれば安全で有効である。しかし、不適切に使用すれば皮膚萎縮、毛細血管拡張、皮膚からの吸収による副腎抑制などのリスクあり。眼周囲に外用した場合は眼圧上昇、白内障のリスクもある。重症例では「wet療法」も有効。
tacrolimusにはステロイドによる皮膚萎縮などの合併症はなく、有用であるが高価であることや灼熱感などの欠点もある。発がんリスクについては現時点で小児では悪性腫瘍発生は報告されておらず、証明できていない。
プロアクティブ療法も注目されており、再発率低減が期待される。
掻痒はQOL悪化に関連。ヒスタミンの関与は大きくない。末梢性、中枢性の悪化因子が想定されている。皮膚のバリア機能を維持して刺激物を避けることが重要。
経口抗ヒスタミン薬は直接的な皮疹の改善効果はないが、かゆみを軽減できる。ただし、鎮静性抗ヒスタミン薬の乳児への使用は避けるべき。逆説的に興奮するケースもある。
非鎮静性の抗ヒスタミン薬は掻痒への効果は低いが、環境アレルゲンに感作されている症例では有用である。抗ヒスタミン薬外用は効果がなく、むしろ刺激作用などで皮疹が悪化する危険がある。
AD患者は皮膚バリア機能の低下や免疫異常により皮膚の感染症に罹患しやすい。AD患者の多くはブドウ球菌を保菌しており、感染により悪化する。
希釈した次亜塩素酸入りの入浴が有効な可能性。ヘルペス感染にも注意が必要。
まあ、バリア機能重視ということで最近のトレンドに沿ったサマリーになっています。最近の話題としては適切な入浴回数は個人ごとに異なり、2,3日に1回でもよい(高温多湿の日本で当てはまるかどうかは微妙)、ステロイド外用についてプロアクティブ療法が有効である可能性(ただし副作用についてはまだ検討されていない)、tacrolimusは現時点では安全と思われる、皮膚感染症対策として次亜塩素酸入り入浴に効果あり(人によっては刺激がどうなんでしょうね・・)といったところが注目点でしょうか。
近年ADの病因として皮膚バリア機能の破綻が注目されており、本論文では皮膚対策に重点を置いたアトピー治療について報告した。
臨床症状
アトピーの主要症状は掻痒と反復する湿疹性皮膚炎である。皮膚症状は年齢によって変化する。
QOLに対する影響
ADが患者や患者家族のQOLに及ぼす影響は軽視できない。
病因
皮膚バリア機能の破綻、環境因子、遺伝的素因、免疫異常などが複雑に関与している。かつてはIgE産生異常や肥満細胞の活動性などが重視されたが、最近はバリア機能の破綻が重視されてきている。
皮膚バリア機能の主な働きは保湿、外部からの刺激物、抗原、病原体の侵入を防ぐことである。バリア機能維持のためにfilaggrinが重視されている。バリア機能破綻による吸入抗原の侵入、皮膚pHの変化によるブドウ球菌などの増殖も関係が疑われている。
アレルギーとAD
ADと食物アレルギーの関係はおそらく過大評価されてきたが、真の食物が原因のADはまれである。食物アレルギーによる症状は一般的に蕁麻疹のようなIgEの関与した反応だが、食物でADが悪化する場合は多くは遅延型反応が関与している。食物アレルギーは悪化因子にはなるかもしれないが、原因ではない。ただし、卵アレルギーは例外で、卵アレルギー患者の半数近くが卵制限でAD症状の改善することが報告されている。
皮膚からの吸入抗原の監査を防ぐことでアレルギーマーチを阻止できる可能性がある。
アレルギー性接触性皮膚炎(Allergic contact dermatitis : ACD)はおそらく過小評価されている。治療抵抗性のADの場合、合併を疑う必要がある。
治療の原則
1)皮膚の防御機能を守るためのスキンケア、2)局所抗炎症剤、3)掻痒コントロール、4)誘発因子としての感染症対策 が治療の基本方針
患者家族への教育も重要。
スキンケア
スキンケアの基本は皮膚の保湿機能を維持し、刺激物が誘発因子の侵入を防ぐことである。入浴回数については結論は出ていないが、入浴後にしっかり保湿すれば毎日の入浴の意義はある。皮膚の水分喪失を防ぐためにはぬるめの湯にして、入浴時間は長すぎないようにする。香料などの添加物による悪化の可能性に注意。重要なのは保湿。様々な外用剤があるが、軟膏、クリーム、ローションでは軟膏が保湿効果は高い。保湿剤は最低日に一回は全身に外用する。
外用抗炎症剤
ステロイド外用剤が治療の基本で適切に使用すれば安全で有効である。しかし、不適切に使用すれば皮膚萎縮、毛細血管拡張、皮膚からの吸収による副腎抑制などのリスクあり。眼周囲に外用した場合は眼圧上昇、白内障のリスクもある。重症例では「wet療法」も有効。
tacrolimusにはステロイドによる皮膚萎縮などの合併症はなく、有用であるが高価であることや灼熱感などの欠点もある。発がんリスクについては現時点で小児では悪性腫瘍発生は報告されておらず、証明できていない。
プロアクティブ療法も注目されており、再発率低減が期待される。
掻痒コントロール
掻痒はQOL悪化に関連。ヒスタミンの関与は大きくない。末梢性、中枢性の悪化因子が想定されている。皮膚のバリア機能を維持して刺激物を避けることが重要。
経口抗ヒスタミン薬は直接的な皮疹の改善効果はないが、かゆみを軽減できる。ただし、鎮静性抗ヒスタミン薬の乳児への使用は避けるべき。逆説的に興奮するケースもある。
非鎮静性の抗ヒスタミン薬は掻痒への効果は低いが、環境アレルゲンに感作されている症例では有用である。抗ヒスタミン薬外用は効果がなく、むしろ刺激作用などで皮疹が悪化する危険がある。
感染症対策
AD患者は皮膚バリア機能の低下や免疫異常により皮膚の感染症に罹患しやすい。AD患者の多くはブドウ球菌を保菌しており、感染により悪化する。
希釈した次亜塩素酸入りの入浴が有効な可能性。ヘルペス感染にも注意が必要。
まあ、バリア機能重視ということで最近のトレンドに沿ったサマリーになっています。最近の話題としては適切な入浴回数は個人ごとに異なり、2,3日に1回でもよい(高温多湿の日本で当てはまるかどうかは微妙)、ステロイド外用についてプロアクティブ療法が有効である可能性(ただし副作用についてはまだ検討されていない)、tacrolimusは現時点では安全と思われる、皮膚感染症対策として次亜塩素酸入り入浴に効果あり(人によっては刺激がどうなんでしょうね・・)といったところが注目点でしょうか。